広告運用にこそブランドの理解が重要なワケ

by Soichiro Taniguchi

いきなりですが質問です。
イチからWeb広告を始めるとなれば、まずは何から勉強するでしょうか?

いいバナーの作り方、ダイレクトレスポンスマーケティングやコピーライティングの技法、広告媒体の理解……どれも確かに大切ですし、Web広告で成果を挙げる上ではぜひとも学びたい分野ですね。

しかし一方で、Web広告と「ブランディング」を関連付けて語られることはあまり多くないのではないかと思います。

「ブランドについて深く知ることがWeb広告運用で成功する第一歩だ!」と主張するつもりはありませんが、実は「ブランドとは何か」を理解することも、Web広告を行う上では無視できない事柄なのです。

ふとしくんも言うように、何となく使っても通じるブランドという言葉や概念。
しかし、ブランドについて知れば知るほど、それがWeb広告やマーケティングとは切っても切り離せない概念だと実感できます。

今日は、「なぜWeb広告を出稿するうえでブランドについて考えることが重要なのか?」についてお話できればと思います。

事前のすり合わせ:ブランドの定義について

「なぜブランドについて考えることが大事なのか?」をご紹介する前に、まずは「ブランドとは何か?」という部分から認識合わせをしたいと思います。

というのも、ブランドという言葉には多数の定義があるためです。
「これが正解」というものはなく、シーンや文脈によってその定義の方法も様々です。これがブランドという概念の取っつきにくさにもつながっています。

例えば、マーケティングの本家、アメリカマーケティング協会(American Marketing Association)ではブランドを次のように定義しています。

「個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」

また、一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会では、次のように定義しています。

「ある特定の商品やサービスが、消費者・顧客によって「識別されている」とき、その商品やサービスを「ブランド」と呼ぶ」

AMAの定義はどちらかといえば企業目線で、ブランド・マネージャー認定協会の定義は消費者目線になっていますね。
先にも述べたとおり「唯一絶対の定義」はありません。ここでは広告運用と関連付けるためにも、ブランド・マネージャー認定協会の定義を用いてブランドについて深く見ていきましょう。

なぜブランドが重要なのか?

ブランドを定義したところで、その重要性について改めて考えてみたいと思います。
ブランドの特徴や、強いブランドのメリットは様々ですが、広告主や広告運用者が「ブランドとは何ぞや?」を理解することが大切な理由として、ここでは以下の3点を挙げます。

  1. マーケティング戦略はブランド戦略に基づくものであるため
  2. 広告を出すことも立派なブランディングであるため
  3. ブランドを理解することで、商材や顧客の理解も深まるため

1.マーケティング戦略はブランド戦略に基づくものであるため

マーケティングとブランドの関係性を整理すると、マーケティング従事者がブランドを理解することの大切さを実感できます。

企業は経営理念(ミッション・ビジョン)を土台とし、経営戦略、マーケティング戦略、コミュニケーション戦略を打ち立てます。これらはピラミッド状になるのが通例で、下の階層をしっかりと踏まえたうえで上の戦略を立てることにより、効果を発揮します。

では、ブランド戦略とは何かと言えば、この経営戦略~コミュニケーション戦略までを包括する全体戦略のことを指します。企業の活動は、マーケティングに留まらず、あらゆる活動が企業のブランド戦略に基づいて実行されるものであるということです。

つまり、消費者・顧客が企業や商材をどのように認識し、どのようなイメージを抱くのかは、経営戦略レベルから一気通貫したものである必要がある、ということですね。

これを踏まえると、マーケティング活動、特にWeb広告を出稿することも、もちろんブランド戦略に基づいたものでなければなりません。
ブランド戦略を踏まえずにWeb広告だけ勝手なことをしていては、一貫したブランドづくりはできないでしょう。

2.広告を出すことも立派なブランディングであるため

ブランドの定義をおさらいしましょう。「ある特定の商品やサービスが、消費者・顧客によって「識別されている」とき、その商品やサービスを「ブランド」と呼ぶ」でしたね?

これは、ブランドとは「消費者・顧客の側にある」ということを意味しています。
企業側がどれほど「この商品は新しくて珍しいものだ!」と声高に喧伝しても、「この商品はあの○○と同じだな……」と消費者・顧客側に思われるのであれば、それがその企業にとってのブランドに他ならないのです。

さて、この企業側が発する「これがウチのブランドだ!」と思ってもらいたいものと、消費者・顧客側が「これがこの企業(商材、サービス)のブランドね」と思い浮かべるイメージをなるべく近づける活動をブランディングと呼びます。

ということはつまり、Web広告を出稿することも立派なブランディングと呼べるわけです。

認知施策だの獲得施策だのといったことは広告主側の都合でしかなく、広告に触れる消費者・顧客側にとっては関係のない話。広告主が誰かに対して広告を出すことそのものが、受け手側のブランド認知を形成するきっかけ、すなわちブランディングになるのですね。

そうともなれば、広告作成や実際に配信する際にも、「この施策・媒体・クリエイティブはユーザーにどんなブランドイメージを形成させるのだろう?」と考える必要が生まれてくるわけです。
コンバージョン率を高めるためとはいえ、商品やサービスにそぐわないイメージを喚起させかねない広告施策を打ち出してもいいものか……と問い直すきっかけにもなりますね。

3.ブランドを理解することで、商材や顧客の理解も深まるため

ブランドについて深堀していくと、その商品やサービスの「買われる理由(USP)」や消費者・顧客が抱いている本音「インサイト」にたどり着くことがあります。

ブランドには「機能的価値・情緒的価値・自己実現価値」があるとされています。
自社の商材やサービスにはそれぞれどのような価値が備わっているのか、または足りていないのか。
ヘビーユーザーやライトユーザーは、どのような価値を感じ、商材やサービスを利用して下さっているのか。

こうした事柄について洞察を重ねることで、広告の訴求軸もより解像度を高められるでしょうし、広告以外の領域に活かすこともできるでしょう。

広告運用においてブランド理解をどう活かすか?

ブランド理解の大切さを見てきたところで、次は広告運用にどのように活かすのかを整理してみましょう。
こちらも一例ではありますが、3点について見ていきたいと思います。

  1. クリエイティブ制作
  2. 配信設計
  3. 中長期の広告戦略

1.クリエイティブ制作

ブランド理解をすぐに活かせるのは、クリエイティブ作成の局面でしょう。

テキストで何を訴求するか?
どのようなバナーを作成するのか?
デザインやカラーは?
フォントはどれを使うのか?

等々、クリエイティブ制作においては様々な要素を複合的に考えなければなりません。

その際に、「消費者・顧客にどんなブランドとして認識されたいのか」という広告主と受け手双方の視点に立つことで、クリエイティブ制作の方向性もより明確になります

広告とは企業と消費者・顧客とのコミュニケーションツールですから、企業側が伝えたいイメージはもちろん、それによってどのようなイメージを受け手にもたらすのかをクリエイティブに落とし込みます。
その際に、ブランディングの視点を持つことができればクリエイティブ制作に仮説を立てることができるでしょう。

暗中模索ではなく、ブランディングを通した企業と消費者・顧客の理想の関係像を描くことで、クリエイティブ制作やディレクションの粒度もより確かなものになるはずです。

2.配信設計

クリエイティブ(広告そのもの)からもう少し目線を引いてみると、どのような媒体で出稿するのか、ユーザーに接触する配信面はどこで、タイミングはいつなのか、という配信設計が見えてきます。

例えば、ブランドイメージにそぐわない配信面や媒体を避けることはもちろんですが、むしろ「ユーザーにとって広告を好意的に受け入れてもらえる配信面や媒体、タイミングはないか?」という視点で考えることもできます。

一般的に、ネットユーザーにとってWeb広告とは倦厭されがちな存在です。実際のところ、ウェブサイトや動画を見ていて「広告邪魔だな……」と思うことは一度や二度ではないはず。

だからこそ、「煙たがられない広告の配信」を考え抜くことで「嫌がられないブランドイメージの形成」につなげることができるのではないでしょうか。

3.中長期の広告戦略

さらに運用型広告を俯瞰してみると、数カ月、数年単位でどのような広告配信を行っていくのか、という中長期の広告戦略までたどり着きます。

Web広告はダイレクトレスポンスに強みがありますので、つい獲得のための広告に偏重してしまいがちです。
しかし、新規顧客を獲得するためだけに広告を最適化することが最善の策とは限りません。

獲得に偏重した広告は、直近のニーズの高い顕在層の獲得増加にはつながるでしょうが、将来の見込み客――いずれ購入してもらえるかもしれないユーザーの発掘には不得手です。

中長期の目線に立つことで、獲得だけでなく「ユーザーのニーズをどのように喚起するか」「どうやってブランドへの好感度を上げて、先の購入に繋げるのか」といった視点での広告運用が可能になります。

獲得のための広告ではなく、ブランドを育てるための広告。

持続可能なビジネスのために広告運用で寄与できることは何か。
それを考えるきっかけを、ブランドの理解が与えてくれるでしょう。

上記で挙げた3点以外にも、ブランドを理解することでレベルアップできる広告運用の視点は無数にあります。
今回は一部の例のご紹介に留めますが、ブランドを理解して育てる視点をもつことで、消費者・顧客と企業双方に寄り添った広告運用が実現すると思っています。

ブランド理解に基づいた広告運用をご提供します

今回は、ブランドとは何か?といった初歩から、広告運用者がブランドを理解することの重要性と、実際の運用にどう活かすことができるのかを整理してみました。

ブランドを理解し、大切にすることで、顧客をただ獲得するだけではなく、ブランドそのものの成長にも貢献します。

Shiftでは、お客様のブランドを理解し、ブランドを大切に育てる目線での広告運用を行っております。
ご興味のある方、ブランドの成長にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


この記事を書いた人

Soichiro Taniguchi

広告運用事業部メンバー。ECからtoB、toCリード獲得まで幅広く担当。 愛するクリエイターは神林長平、冲方丁、山田風太郎、小島秀夫、クリストファー・ノーラン。