【その用語の使い方、本当に大丈夫?】運用者だからこそ気を付けたい専門用語の使い方

by Soichiro Taniguchi

運用型広告の世界では、毎日さまざまな専門用語が飛び交っています。
CPA、CVR、CPC、ROASなどのカッコよさそうな略語の数々。
検索クエリー、品質スコア、インプレッションシェアといった、いかにも専門的な単語たち。

日常生活では聞きなれない言葉ばかりですが、業界にどっぷりと浸かっていると「どういう意味だったっけな……」といちいち思い出さなくても使えてしまいます。

しかし、その言葉の意味をあらためて説明できるでしょうか。
実際には言葉の定義が人によって若干違っていた、なんてこともあるのではないでしょうか。

それが仲のいい者同士ならばいざしらず。
厳しいビジネスの世界に生きる私たちにとっては、定義のちょっとした解釈違いが意図のズレを生み、それが大きな亀裂となることだってあり得ます。

お客様とのコミュニケーションにおいても解釈や意図のズレがないよう、用語の定義や使い方についてはしっかりと押さえておきたいところです。

お客様とのコミュニケーションで注意したいポイント

「キーワード」と「検索語句」の使い分け

一般的に検索エンジンを用いるユーザーが、「キーワード」と「検索語句」を使い分けることはそうそうありません。
運用者にとっては馴染み深いこの二つも、お客様に対しては用途や違いについてしっかりと意識したうえで説明する必要があります。

運用型広告において、キーワードとはユーザーに広告を表示するために設定する単語やフレーズです。
どのようなユーザーに広告を表示するかという、いわゆるターゲティングに使用されるテキスト(およびマッチタイプ)のことです。

一方で、検索語句とは実際にユーザーが検索している言葉を指します。
「リスティング広告 広告文 作り方」とか「近くのおしゃれなレストラン」などですね。
ちなみに、Googleでは「検索語句」と、Yahoo!では「検索クエリー」と表記されています。 

どうか「そんなこと知ってるよ」と高をくくらないで、運用型広告を知らなかった時代のことを思い返してみてください。
キーワードと言われて、検索語句との違いなど意識したことがあったでしょうか。

お客様とのやり取りの中で、代理店側が意識して使い分けていようと、お客様にとっては同じもののように聞こえてしまうこともあるはずです。
あらかじめ定義や使い分けについてしっかりと説明し、提案や報告において齟齬のないように気を付けたいところです。

略語と表記ゆれ

冒頭でも挙げましたが、CPAやCPCといった略語は非常に便利です。
運用に携わっていると「CPCは、Cost Per Clickだから……」などといちいち考えずとも「CPCを抑えるには……」とスムーズに理解できます。

ですが、それは日ごろから触れているからこそ。

レポートや総評の中でも使われますし、もちろん口頭で用いることもあるでしょう。
そのような時、きちんと相手に伝わっているかどうかを考えなければならないのは、言うまでもありません。

加えて注意したいのが、テキスト上での表記ゆれです。
ある場所では「平均クリック単価」と表記し、ある場所では「CPC」と表記し……と同一の資料の中で表記が数種類にわたってしまうのは理想的ではありません。
(「検索語句」や「検索クエリー」なども同様ですね。)

都合によって統一できない場合もありますが、なるべく同一の表記を使うように心がけてみませんか。
そうした細やかな気配りが、コミュニケーションの質を高めることにつながってきます。

運用関係者の間でもよくある勘違い

「品質スコア」と「広告の品質」

これは紛らわしい用語の代表例です。この両者は似て非なるものであることを意識しなければなりません。
悲しいことに、時折、業界関係者の間でも混同して扱っているケースが見られます。

最たる間違いが、「広告ランク=品質スコア×入札単価+α(広告表示オプションなど)」というものです。
これは「品質スコア=広告の品質」という誤解から来ています。

媒体の公式ヘルプを参照してみましょう。
Googleでは、広告ランクについて以下のように説明しています。

広告ランク

広告の掲載順位(広告が他の広告との比較によってページのどこに掲載されるか)と、広告掲載の有無を決めるために使用される値です。広告ランクは入札単価、オークション時の広告の品質(推定クリック率、広告の関連性、ランディング ページの利便性など)、広告ランクの下限値、オークションにおける競争力、ユーザーが検索に至った背景(ユーザーの所在地、デバイス、検索時間、検索語句の性質、ページに表示されるその他の広告と検索結果、その他のユーザー シグナルと属性)、および広告表示オプションなどの広告フォーマットの見込み効果を使って算出します。
https://support.google.com/google-ads/answer/1752122 より抜粋)

ここから、広告ランク算出には「広告の品質」が加味されていることがわかります。
それでは「広告の品質」とはどのようなものでしょう?

広告の品質について

広告の品質とは、検索広告をユーザーが目にした際のエクスペリエンスを推定したものです。
広告の品質は、検索内容に対する広告文の関連性、ユーザーが広告をクリックする可能性の高さ、ランディング ページへ進んだユーザーに提供されるエクスペリエンスの質など、複数の要素によって決まります。
一般に、広告の品質が高いほうが、優れたパフォーマンスを期待できます(掲載順位が高く、費用は少なくなるなど)。
(https://support.google.com/google-ads/answer/156066 より抜粋)

つまり、広告の品質には広告文の関連性、推定クリック率、ランディングページの利便性の3点セットが深く関わっていることがわかります。
これを読み、「ならば品質スコアと同じでは?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。


しかし、残念ながら広告の品質と品質スコアとは全くの別物なのです。

品質スコアについて

品質スコアは、他の広告主様と比べた広告の品質の目安をスコアで表示する診断ツールです。(中略)品質スコアは、広告オークションにおける評価材料にはなっていません。あくまで診断ツールとして、あるキーワードに対して表示される広告がユーザー エクスペリエンスに及ぼす影響を示したものです。
(https://support.google.com/google-ads/answer/6167118?hl=ja&ref_topic=10549746
より抜粋)

そう、上記にあるとおり「品質スコア」とはあくまで診断ツール。
しつこいようですが、広告の品質とは全くの別物なのです。

品質スコアを上げることで、広告の品質の改善につながることは確かです。
ですが、たとえスコアが10/10であったとしても、広告の品質が常に最高であるとは限りません。

品質スコアの数値に固執するのではなく、あくまで指針として捉えたうえでキーワードや広告文、LPを改善していく必要があります。

この例に限らず、運用者は媒体のヘルプを読み込むことが欠かせませんね。

用語の使い方を疑うことの大切さ

今回は、ともすれば居丈高に思われるかもしれない内容を書き連ねました。

「言われなくてもわかっているよ」と思われる方。
「知らなかった……」と思われる方。

様々に感じられるかと思いますが、この機会にいま一度、用語の使い方について振り返ってみてはいかがでしょうか。

たかが言葉、されども言葉。
言葉の使い方のちょっとした差が、コミュニケーションや業務そのものに大きな影響を与えかねません。

それはクリエイティブの中身についても同じです。
同じような広告文であっても、語尾が違ったり、表記がひらがなか漢字かの違いで受け手の印象も変わってきます。

常に「言葉の使い方」を疑い、問うことが、広告に携わる者として不可欠な視点ではないでしょうか。


この記事を書いた人

Soichiro Taniguchi

広告運用事業部メンバー。ECからtoB、toCリード獲得まで幅広く担当。 愛するクリエイターは神林長平、冲方丁、山田風太郎、小島秀夫、クリストファー・ノーラン。